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2 . PREFACE



TV共聴型LANシステムについて

 TV共聴型LANシステムとは従来のTV共聴システムをそのまま利用してコンピューターネットワークを構築するシステムです。もちろんTVは従来のまま使い続けることが出来ます。何らの変更や設定も必要ありません。LAN信号はTV信号とともに同一の同軸ケーブル内を流れます。利用者にはあたかもコンピューター配線(LAN配線)とTV配線が2本あるかのように感じられることでしょう。このシステムは従来不可能であったり、コストに阻まれてLAN工事をあきらめていた所にマルチメディアを扉を開きます。

 TV共聴型LANシステムはTV共聴側には全く影響がありません。一方、LAN側の信号はTV線の中で通信させるため特性インピーダンスを50Ωから75Ωに合うように変更しています。信号の変調方法や形態を変更しているわけではありませんが、機器を完全に作動させるために処理を行っています。この処理以外はIEEE802.3の規格と全く同一です。利用者は何も気にすることなく使用できます。
 建築設計者や工事事業者にとってコンピュータの規格というには馴染みにくいものですがIEEE802.3の規格には十分注意する必要があります。TV共聴型LANシステムは特性インピーダンス以外はこの規格に準拠します。TV共聴型LANの設計でも規格内で行う必要があります。

 施工以前にいくつか理解しないといけない部分はありますが、TV共聴型LANシステム―Digital Way―を導入すれば1本の電話回線でビル全体のコンピューターがインターネットへ接続可能になるのです。この効果は大きく非常に安いランニングコストでかつ高付加価値の回線を自由に使うことが出来るようになるのです。



このマニュアルについて

 このマニュアルは株式会社デジタルペーパー社がDigital Wayを導入していただく関係者と利用者に、よりスムーズに導入できるように作成したものです。従って通常のLANの利用者や他のシステム利用者は参考にするべきではありませんし、してはいけません。



一般的なTV共聴について

 本マニュアルでいうTV共聴システムとは、テレビジョン共同受信設備のことで1970年頃から普及し始めたビルの共同受信システムのことです。当初はVHFやUHFだけでしたがBS放送やCS放送の開始とともに共同受信設備も高度化しています。また、CATVでは双方向システムの導入によりマルチメディアの媒体として利用しようとする動きも出てきています。
 このTV共聴システムではケーブル線に5Cや7Cと呼ばれるケーブルが利用されています。このケーブルは特性インピーダンスが75Ωです。前に着く数字はケーブルの太さを現しています。ケーブルの太さと線材はともに信号のロスと大きな関係を持っています。
 基本的にTV共聴の設計では最も電界強度の低い部分で65-70dBが確保できるように設計されています。CATV事業者によっては75dBを設計基準としているところもあります。TVの画面の感じ方はさまざまですが、65dBを下回るようでは問題があります。場所や受信設備によって要求性能は異なります。
 Digital Wayを施工するにあたってはTV共聴の十分な知識と経験が必要になります。TV信号の利用度の広がりのためTV共聴のみでもかなり複雑になっていますので、不明確な点は事前に調査の上工事に着手しください。Digital Wayは完全なTV共聴工事を要求します。TVが映らない状態ではLANの構築はままならないでしょう。

 テレビジョン共同受信設備の工事に関しては下記のような諸規定がありますから是非とも順守してください。

□ 有線テレビジョン放送法
□ 電気設備技術基準

 次項にはチャンネル別周波数の一覧及び同軸ケーブルの減水特性表をを記載しておきますので参考にしてください。

表 チャンネル周波数テーブル

	

表 同軸ケーブルの減衰特性(単位:dB/km)


(注)メーカー及び測定機の種類により多少数字は異なります。



一般的なLANについて

 LANとはローカル・エリア・ネットワークの略号で一般的にはコンピューターの小規模なネットワークを意味します。通常は数台から200台以下ぐらいのコンピューターで構成されます。しかしこの定義はさして意味のあるものではありません。

 LANの中で使われる信号形態は1つではありません。よく利用されるのがEthernetやTokenlingです。日本では前者、USAでは後者が支配的です。共に国際規格IEEEに準拠しています。

 Digital WayではEthernetを利用します。ただし、他のシステムが利用できないわけではありませんので、導入物件に最も合う形で設計をお願いします。

 Digital Wayの元となるLAN配線はEthernet 10BASE-2 の規格です。これはIEEE802.3に規格化されています。この規格内容は非常に分かりにくいですが、解説書も出ていますので一度読まれることをお勧めします。このほか10BASE-Tを利用して接続する方法があり、より一般的な方法です。Digital Wayにおいても室内の配線は10BASE-Tで配線することをお勧めします。この規格もIEEE802.3に記されています。



Ethernet 10BASE-2について

 10BASE-2は10BASE-5と同じように同軸ケーブルを用いる伝送方式を利用しています。ネットワークのワイヤリングが極めて簡単で室内配線のバックボーン用配線として多く用いられていました。T型コネクターによりコンピューターやハブとの接続が可能なのも大きな特長です。

T型コネクター

 通信速度は10Mbpsでバス型配線(トロポジー)を採用しています。10BASE-2で使用する配線は同軸ケーブルで断面径5mm、中心導線0.89mm、シールド径3mmです。


T型コネクターと配線接続



 10BASE-2は工事性に優れる配線方法ですが、いくつか制限事項があります。

    □ 端末接続箇所が最大30ポイント
    □ 1セグメントあたりの最大セグメント長が185m
    □ デバイス間の距離が最小0.5m

 1セグメントに取り付けるデバイス数や最大長が決まっていますが、セグメントは最大3つまで接続できます。この接続にはリピーターを使用します。実際の配線では10BASE-5や10BASE-Tを組み合わせてネットワークを構築していきます。
 10BASE-2はDigital Wayにおいて基本となる配線方法ですから十分に理解しておくことをお勧めします。


図 10BASE2 の基本的な配線方法


図 10BASE-2 ケーブル断面


Ethernet 10BASE-Tについて

 10BASE-Tは現在最も一般的なネットワークの接続方法です。この規格もIEEE802.3です。配線にはツイストペアケーブルを用い、接続部分にはモジュラージャックRJ42を使用します。大規模なLANになると10BASE-2や10BASE-5と組み合わせて使用するのが通常です。10BASE-Tが使いやすいのは終端処理が内蔵されているため使用者にとって気にする必要がないことが挙げられます。
 10BASE-Tにもいくつかの制限事項があります。

    □ ハブの通過は4台まで
    □ ケーブル長は最長100m

 このように10BASE-Tは通常室内の配線に使用するのに適した規格になっています。Digital Wayではシステム全体にリピーターやハブを使用してネットワークを構築しますのでハブの段数は十分に気を配っておく必要があります。リピーター、ブリッジやルーターなどの基本的な機器の性能や使用条件は是非とも理解しておいてください。その上で室内のハブが何段使えるのかをユーザーに伝える必要があります。



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